経営判断の場で、
「なんとなく引っかかる」
「言葉にできないが、しっくりこない」
そんな感覚が出てくることがあります。
しかし多くの社長は、その違和感を
考え直す材料ではなく、無視すべきノイズとして扱ってきました。
結論から言えば、
その違和感こそが、次の判断精度を左右する重要な情報です。
この記事では、
なぜ社長ほど違和感を置き去りにしやすいのか、
そして、違和感を扱えるようになると何が変わるのかを整理します。
社長ほど「感覚」を切り離す訓練を受けてきた
社長という立場になるまでに、
多くの人は次のような成功体験を積み重ねています。
- 感情よりも合理性を優先してきた
- 空気よりも成果を取ってきた
- 迷っている時間より、決断の速さを評価されてきた
この積み重ねは、間違いなく経営者としての力です。
ただし同時に、
「感じていることを後回しにする癖」も育ててきました。
これは性格の問題ではありません。
環境によって自然に身についた思考習慣です。
頭は整理されているのに、腹が決まらない理由
経営者の相談を受けていて、よく出てくる言葉があります。
- 「整理はできているんです」
- 「理屈は分かっているんですが」
- 「説明はできるんですが、踏み切れなくて」
これは、
思考の整理と、内側の整理が別物になっている状態です。
頭の中では、
- 情報
- 選択肢
- リスク
がきれいに並んでいる。
しかし、
身体や感情のレベルでは、
「納得」や「覚悟」が置き去りになっている。
この状態で決断しようとすると、
判断は急に重くなります。
違和感が無視されやすい3つの構造
① 違和感は「言語化しにくい」ため、価値が低く見える
経営の現場では、
説明できるもの、数値化できるものが重視されます。
一方、違和感はこう表現されがちです。
- なんとなく
- しっくりこない
- 気になる程度
この曖昧さが、
「まだ判断材料として弱い」と扱われる原因になります。
しかし実際には、
違和感は情報が未整理なだけで、
中身がないわけではありません。
② 「感じている自分」を信用しなくなっている
長く経営をしているほど、
社長は自分にこう言い聞かせてきました。
- 個人的な感情を入れてはいけない
- 好き嫌いで決めてはいけない
- 客観的であるべきだ
その結果、
感じている自分より、考えている自分だけを信頼する
状態が出来上がります。
これは、ブレーキではなく、
“センサーを切った状態で運転している”のに近い。
③ 誰にも「そのまま出す場」がない
違和感は、整理されて初めて意味を持ちます。
しかし多くの社長は、
- 社員には弱音を出せない
- 役員には結論を求められる
- コンサルには答えを期待される
結果として、
違和感を違和感のまま出せる場所がありません。
だから判断は、
頭の中だけで何度もループします。
「決断が遅い」のではなく、「整っていなかった」社長
ある社長は、
新しい評価制度の導入を前に立ち止まっていました。
制度設計はできている。
他社事例も調べている。
数字的な裏付けもある。
それでも、なぜか決断できない。
話を重ねる中で出てきたのは、
制度そのものではなく、
- 社員との距離感が変わる不安
- 評価する側としての覚悟
- 過去の判断で後悔している記憶
これらは、
どれも「正しいかどうか」では測れないものです。
それを一つずつ言葉にしていくと、
判断は自然に前へ進みました。
決断力が上がったのではありません。
内側が整っただけです。
違和感を扱うときに、勘違いしやすいこと
よくある誤解①
「違和感を大事にすると、感情的になる」
→ 違います。感情に流されるのではなく、感情を整理することです。
よくある誤解②
「違和感を重視すると、決断が遅くなる」
→ 実際には逆で、後戻りが減ります。
よくある誤解③
「時間があるときにやればいい」
→ 違和感は、放置すると必ず判断を重くします。
まとめ
社長が違和感を放置したまま決断してしまうのは、
- 感覚を後回しにする習慣がある
- 言語化しにくいものを軽視してきた
- そのまま出せる場がない
この3つが重なっているからです。
違和感は、敵ではありません。
次の一手を整えるための未整理な情報です。
立ち止まって整理することで、
判断は軽くなり、
決断後の迷いも静かになります。

